ロールモデルとは?企業が採用するメリットや求められる条件を解説!

戦略・フレームワーク

ロールモデルを設定することで組織が活性化するのはわかっているけれど、具体的にどのように探せばいいのかわからない……。そんな悩みを抱える人事担当者も多いのではないでしょうか。

実は、組織の成長をより効果的に促進するためには、単に成功者を見つけるだけでは不十分なのです。年代や職種に応じた適切なロールモデルの設定が重要となります。

本記事では、ロールモデルの具体例や効果的な活用法、メリットなど、人材育成のヒントを詳しく解説します。これを読めば、あなたの組織に最適なロールモデル戦略が見えてくるはずです。

ロールモデルとは?

企業の成長には、社員一人ひとりの成長が不可欠です。その成長を促進する重要な要素として注目されているのが「ロールモデル」です。ここでは、ロールモデルの概要と、近年特に注目されている背景について解説します。

ロールモデルとは「お手本となる」人物のこと

ロールモデルとは、考え方や行動のお手本となる人物を意味します。ビジネスシーンでは、仕事における言動やキャリア形成において模範となる存在を指します。ロールモデルを設定することで、自身の目指すべき姿が明確になり、キャリアの道筋を具体的にイメージできるようになります。

また一人のロールモデルだけでは、目指す目標を完全にカバーできない場合もあります。そのような場合は、「プレゼン能力はAさん」「マネジメントスキルはBさん」というように、複数のロールモデルを設定することで、より効果的な成長が期待できます。

ロードモデルが注目される背景

近年、働き方の多様化が進み、キャリアの選択肢が大きく広がっています。しかし、選択肢が増えたことで「どのようなキャリアを築くべきか」悩む人も増えています。

そんな中、ロールモデルの存在は重要な道標となります。特に、結婚や出産などのライフイベントと仕事の両立を目指す女性にとって、先輩社員の成功事例は大きな励みとなります。ロールモデルがいることで、自分のキャリアをより具体的に描けるようになり、成長への意欲も高まるのです。

ロールモデルの例

ロールモデルは様々な形で存在します。身近な先輩から歴史上の偉人まで、その対象は多岐にわたります。以下では、代表的なロールモデルの例をご紹介します。自社の状況や目的に応じて、最適なロールモデルを見つけることが重要です。

同じ会社で働いている身近な先輩・上司

身近な先輩や上司は、最も効果的なロールモデルとなります。同じ企業文化の中で、具体的な仕事の進め方や課題への対処法を直接観察できるからです。

また、日常的なコミュニケーションを通じて、考え方や判断基準を学ぶことができ、より実践的な成長につながります。

取引先・同じ業界の人物

取引先や同業界の人物も、有効なロールモデルとなり得ます。社内とは異なる視点や手法を学べる点が特徴です。

特に、自社内に適切なロールモデルが見つからない場合、外部の優れた人材から学ぶことで、新しい気づきや成長機会を得られます。

歴史上の人物

渋沢栄一や稲盛和夫といった歴史上の人物をロールモデルとすることも可能です。彼らの生き方や経営哲学から学ぶことは多く、特に経営者や管理職を目指す人にとって、重要な示唆を得られます。

ただし、現代とは異なる時代背景があることを考慮しながら、自身の状況に応用することが大切です。

既存の企業・ブランド

ロールモデルは必ずしも「人」である必要はありません。トヨタ自動車のような成功企業の経営理念や組織文化を参考にすることも効果的です。

企業やブランドの成長過程や課題解決方法を学ぶことで、自社の経営にも活かせる示唆が得られます。特に、起業家や経営者を目指す人にとって、企業のロールモデルは重要な指針となるでしょう。

ロールモデルを設定するメリット

企業がロールモデルを設定することで、組織には様々なメリットがもたらされます。特に注目すべきは、離職率の低下と組織の活性化です。これらのメリットについて、具体的に見ていきましょう。

離職率の低下に期待できる

ロールモデルの存在は、社員の定着率向上に大きな効果をもたらします。特に「入社時に思い描いていたキャリアが実現できない」と感じている若手社員にとって、ロールモデルの存在は重要です。社員は自分の将来像をロールモデルに重ね合わせることで、「この会社で目指すキャリアを実現できる」という希望を見出すことができます。

さらに、ロールモデルの経験から具体的なキャリアパスを学べることで、自身の成長への不安も軽減されます。企業側も、ロールモデルの存在を通じて明確なキャリアビジョンを示し、その実現に向けた支援を行うことで、社員の定着率を高めることができます。

組織全体が活性化する

ロールモデルの存在は、組織全体の活性化にも大きく貢献します。社員がロールモデルの考え方やスキルを学ぼうとする過程で、自然とコミュニケーションが活発になるためです。日常的な対話を通じて、業務上の新しいアイデアが生まれたり、他部署との相互理解が深まったりする効果も期待できます。

また、ロールモデル側も「手本となり続けるべく頑張ろう」という意識が高まり、組織全体が良い意味で切磋琢磨する環境が生まれます。こうした相乗効果により、組織全体の成長スピードが加速するのです。

企業のロールモデルに求められる条件

ロールモデルの条件は、社員のキャリアステージによって大きく異なります。新入社員、中堅社員、ベテラン社員、それぞれの段階に応じた適切なロールモデルを設定することで、より効果的な人材育成が可能になります。

ここでは、各キャリアステージで求められるロールモデルの条件について詳しく解説します。

新入社員向けのロールモデル

新入社員向けのロールモデルには、基本的なビジネススキルを確実に身につけている人物が適しています。具体的には、上司や先輩からの指示を正確に理解し、確実に遂行できる能力や、チームメンバーとの効果的なコミュニケーション力を持つ人物が望ましいでしょう。

また、計画に対して予定通りの成果を上げられることや、業務知識を積極的に吸収する姿勢も重要な条件となります。特に入社3〜5年程度の若手社員をロールモデルとすることで、新入社員にとって具体的で身近な目標となり、より効果的な成長が期待できます。

中堅社員向けのロールモデル

中堅社員向けのロールモデルには、部下や後輩への的確な指示出しができ、チーム外との連携も円滑に行える人物が求められます。具体的には、関連する業務の重要度や所要時間を的確に把握し、効率的な業務遂行ができること、会議の事前調整や当日の進行を適切に行えることなどが重要な条件となります。

また、自主的に学びを得ようとする姿勢や、相手の意図を明確に読み取れるコミュニケーション能力も必要です。現場の推進力となる実務担当者として、チーム全体のパフォーマンスを高められる人物が理想的です。

ベテラン社員向けのロールモデル

ベテラン社員向けのロールモデルには、組織全体のパフォーマンスを最大限に引き出せる管理職としての資質が求められます。具体的には、部下への適切な権限委譲ができること、チーム全体の作業効率を高められること、社内外に広いコミュニケーションネットワークを持っていることなどが重要な条件となります。

また、会議では参加者の主体性を引き出すファシリテーションができ、複雑な課題に対しても綿密な準備のもと効果的な交渉ができる人物が望ましいでしょう。組織の中核として、次世代のリーダーを育成する視点も持ち合わせていることが理想的です。

ロールモデルを導入するまでの流れ 

企業がロールモデルを効果的に活用するためには、計画的な導入プロセスが重要です。

ここでは、ロールモデルの設定から社内への周知まで、段階的な導入の流れについて解説します。適切な手順で進めることで、より効果的な人材育成が実現できます。

従業員が目指すロールモデルを設定する

まず、年代や部門などそれぞれのキャリアステージに応じて、企業が求めるロールモデル像を明確に設定する必要があります。スキル面、キャリア面、ワークライフバランス面など、多角的な視点から理想となる人物像を描きます。

例えば、新入社員には「積極的に様々な仕事にチャレンジしている人材」、中堅社員には「将来的なキャリアビジョンを持ち、自己研鑽に励む人材」といった具合です。また、現時点で社内にそうしたロールモデルとなり得る人材がいるかどうかも把握しておくことが重要です。

ロールモデルになる従業員を育成する

ロールモデルとなる人材の育成には、主に集合研修と個別研修の2つのアプローチがあります。集合研修では、モチベーション向上や部署を超えたネットワーク構築、視野の拡大を図ります。同じ立場の社員同士で課題を共有し、解決策を見出す機会にもなります。

一方、個別研修では、計画的な異動や配置、必要なスキル習得のための外部研修への参加、メンターの配置などを行います。それぞれの社員の特性や課題に応じて、きめ細かな育成プランを立てることが重要です。

ロールモデルを社内に周知する

設定したロールモデルは、社内に広く周知することで効果を発揮します。社内SNSや広報誌を活用し、ロールモデルとなる社員のキャリアパスや、具体的な成功体験を共有します。その際、「スキルアップ」「転勤」「育児との両立」といったテーマ別に整理して紹介すると、より参考にしやすくなります。

また、ロールモデルの趣味や私生活に関する情報も適度に盛り込むことで、親近感を持ってもらいやすくなります。社員研修や採用活動の場でも、具体的な事例として紹介することで、組織全体への浸透を図ることができます。

まとめ

企業の持続的な成長には、社員一人ひとりの成長が不可欠です。そのためには、適切なロールモデルの存在が重要な役割を果たします。各キャリアステージに応じたロールモデルを設定し、計画的な育成と周知を行うことで、組織全体の活性化や離職率の低下といった具体的な成果が期待できます。

特に働き方が多様化する現代において、明確なキャリアの道標となるロールモデルの存在は、社員の成長意欲を高め、企業の競争力強化につながるでしょう。