最近注目されている企業のブランディングのためのマーケティング手法として、ブランディングムービーがあります。企業が企業自体、あるいは商品やサービスの魅力を伝えるのに、ブランディングムービーはなぜ有効なのでしょうか。
本記事では、企業がブランディングムービーを作る目的や具定例を紹介していきます。
ブランディングムービーとは
ブランディングムービーとは、企業のブランディングのために作られた動画のことです。ブランディングムービーは、企業の理念やビジョンを伝える、あるいはブランドのもつ世界感や独自性を示す、商品やサービスの特徴や利用シーンなどを紹介するといった内容が一般的です。
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ブランディングムービーの目的
ブランディングムービーは、主に以下の目的で作られています。
- 認知の獲得
- ファンを増やす
- 優秀な人材の確保
ブランディングムービーは、直接的な売上アップを目的として作られるものではありません。しかし、ブランディングムービーによって認知が拡大すれば、見込み顧客が増えていきます。
また、見込み顧客がブランディングムービーにより親しみを感じ、自社のファンになっていけば、顧客、ひいてはロイヤル顧客となり、売上の向上につながっていきます。
このほかにブランディングムービーは、企業の認知度やイメージの向上によって、優秀な人材を確保する目的で作られていることもあります。
ブランディングムービーの重要性
ブランディングを行うことによって、「○○ならあの商品」という認識が広まります。すると、広告宣伝費をかけずに顧客を獲得できるようになり、価格競争に巻き込まれなくなります。そのため、中長期的な視点でみると、企業にとってブランディング戦略は重要なのです。
ブランディングためのマーケティング手法の中で、ブランディングムービーが注目されているのは、視覚と聴覚の両面から訴えられるため、テキストや静止画よりも短時間で多くの情報量を伝えられるためです。
ブランディングムービーは直接購入に結びつくことを目的としているものではなく、視聴者が共感できる内容で構成されていることから、視聴者がクリエイティブとして楽しんで視聴しやすいという特徴があります。そのため、最後まで見てもらえる可能性が高く、ブランディングに大きな貢献をすることが期待できます。
ブランディングムービーと広告動画の違い
広告動画は視聴者が本来見たいと思っている動画の前に強制的に流されるため、受動的に見ることから、スキップされることがあります。
一方、ブランディングムービーは、視聴者が見たいと感じた場合に自ら再生するため、能動的に見るという点が異なります。さらに、ブランディングムービーは内容がよければ、SNSで拡散されることも期待できます。
ブランディングムービーの具体例
ブランディングムービーの例として、3社のケースを例に挙げて紹介します。
- 森ビル
- 東京ディズニーリゾート
- JR東日本
森ビル
森ビルのブランディングムービー「DESIGNING TOKYO」は、「都市を創り、都市を育む」という理念のもと、都市開発を行ってきた森ビルの開発の歴史を振り返るものです。
1956年の「西新橋第2森ビル」に始まり、1978年の「ラフォーレ原宿」、1986年の「アークヒルズ」、2003年の「六本木ヒルズ」、2006年の「表参道ヒルズ」、2014年の「虎ノ門ヒルズ」に至るまで、各ビルや街並みを再現しています。当時の文化人や流行の衣装に身を包んだ人々も登場し、総出演キャスト数318人、CG制作期間約5か月という豪華なプロジェクトとなりました。
「DESIGNING TOKYO」は映像の切り替わりが美しく、クリエイティブでかつ再現性の高い、クオリティの高い作品となっています。森ビルがこれまで東京の都心での都市再生事業によって、東京、そして日本の価値を高めてきたこと、そして、これからの未来の東京をつくっていくといったメッセージが込められています。
東京ディズニーリゾート
東京ディズニーリゾートのブランディングムービー「ここは、永遠に完成しない場所。」は、東京ディズニーリゾート35周年イベントがフィナーレを迎えたタイミングで公開されました。
1983年の東京ディズニーランドのオープン当時の映像から始まり、「どんな景色が現れたら、あなたは初めて来た日のようにワクワクしてくれるだろう。」というナレーションが流れます。そして、後からできた人気アトラクションや東京ディズニーシー、ディズニーリゾートラインなどを映しながら、「やりたいことや作りたいものが次から次へとあふれ出てくる」「だから東京ディズニーリゾートは誕生から今日までずっと未完成なまま」というナレーションが続きます。
そして、ウォルト・ディズニーの言葉が映し出された後、「未完成の夢の先には、きっと誰も見たことのない世界が待っている」というメッセージとともに、ベルの衣装に身を包んだ女の子が、ワクワクした顔でパークに向かうシーンで終わるという構成です。
2018年に35周年を迎えた東京ディズニーリゾートは、2019年~2022年にかけて新たなエリアやアトラクションのオープンを控えています。大人気テーマパークという地位を確立しても、それに甘んずることなく、さらなる進化を遂げていき、さらに顧客満足度を高めていきたいという姿勢が感じられるムービーです。
JR東日本
JR「東日本」のブランディングムービー「TRAINつなげ、未来へ。」はインターンの映像が中心で、人材確保のための企業イメージの向上や事業内容の周知を目的として作られています。
インターンに参加した学生の参加理由から始まり、事業内容の説明を受けているシーンや、東日本大震災で線路が消失した気仙沼線のBRT(バス高速輸送システム)による運行の見学シーンが続きます。社員の言葉や参加者のJR東日本で働きたいと感じている想いなども盛り込まれ、グループワークや発表、懇親会などのシーンも流れるという構成です。
JR東日本が列車を安全に運行するには多くの職種がかかわっていくこと、また、鉄道以外の事業も展開していること、そして公共性のある仕事という点など、JR東日本で働く魅力が伝わる内容となっています。
人気のブランディングムービーの特徴
人気のブランディングムービーとなるのは、途中で視聴者を飽きさせることなく、最後まで見入ってしまうような作品です。共通する特徴として、以下の点が挙げられます。
- ストーリー性があり共感できる
- 企業の思いが伝わる
- 動画の完成度が高い
ストーリー性があり共感できる
人気のあるブランディングムービーは、ユーザーに伝えたいことをもとに、コンセプトがしっかりと設定されています。そして、状況設定もブレがなく、ストーリー性をもたせることで、ユーザーが感情移入して共感できる内容となっているのが特徴です。
ユーザーが共感することで、企業に親しみを感じて自社のファンになってもらえることが期待できます。
企業の思いが伝わる
人気のあるブランディングムービーは広告色を感じさせない内容で、ユーザーの抵抗感が少なく、クリエイティブとして楽しめることから、企業や作り手の思いが伝わりやすいものとなっています。企業の思いが伝わることで、ユーザーをファン化していくのに役立ちます。
動画の完成度が高い
人気のあるブランディングムービーは動画の完成度が高く、クリエイティブとして見ていた面白いのが特徴です。
ストーリー展開やカメラワークが巧みであり、映像が美しく、BGMも演出に一役買っています。また、全体のクオリティの高さは編集のレベルの高さからも実現するものです。ブランディングムービーの動画の完成度の高さは、企業への信頼につながっていきます。
まとめ
ブランディングムービーは、企業が消費者に伝えたいことを動画という形で効率よく紹介することができます。また、ユーザーがクリエイティブとして楽しみながら視聴して、企業の思いが伝わることで、自社のファンになってもらえることが期待できます。そのため、ブランディングムービーを作るときは完成度の高いものを目指しましょう。