デザインシンキングとは~重要性とプロセス、成功事例を欠点を含めて解説

戦略・フレームワーク

「デザインシンキング」や「デザイン思考」という言葉を耳にしたことはありますでしょうか。デザインシンキングは、ビジネス上の課題を解決するためのフレームワークの一つです。

本記事では、デザインシンキングとは何か概要を解説したうえで、デザインシンキングの重要性やプロセス、成功事例などについて紹介します。

デザインシンキングとは

デザインシンキングとは、デザインで用いられる思考方法を使って、ビジネス上の課題を解決していくという考え方で、デザイン思考とも呼ばれています。言い換えると、商品やサービスを利用するユーザーを理解して仮説を立てることで、本質的な課題を発見して、ユーザーも気づかないニーズを見出して、イノベーションを起こしていくという思考方法です。

デザインシンキングにおける「デザイン」の意味

デザインシンキングにおける「デザイン」とは、外見的な装飾を整えることだけを指すものではありません。ここでいう「デザイン」は設計や企画で使われる意味に近く、課題を解決するという意味もあります。

デザインシンキングの目的

デザインシンキングは会社の目線ではなく、ユーザーの目線に立った商品を開発していくことであり、ユーザーにとって使いやすい商品をつくるのが目的です。モノの売れない時代において、ユーザーのニーズに沿った商品を展開することは、売上の確保につながっていきます。

デザインシンキングの重要性

デザインシンキングの重要性

かつて、世の中に冷蔵庫や洗濯機が登場したときには、画期的な商品として多くの人の興味・関心を集めました。しかし、現代では、家電で新商品が出たとしても各社の商品の機能に大きな違いはなく、ユーザーを惹きつけるのが難しいため、モノが売れない時代になっています。

そこで、他社と差別化を図る手法として、ユーザーの視点に立ち、使いやすさを重視した商品を展開するために、デザインシンキングが重要視されているのです。

デザインシンキングのプロセス

デザインシンキングは次に挙げる5つのプロセスで行っていきます。

  1. 共感:ユーザーのことを理解して、ユーザーの視点での考え方に共感をもちます。
  1. 定義:ユーザーの本質的なニーズや課題を発見して明確化する段階です。
  1. 概念化:仮説を立ててユーザーの抱える課題の解決策となるアイデア出していきます。
  1. 試作:試作品を作成する段階です。試作によってアイデアを具現化することで、イメージのずれをすり合わせることが可能です。
  1. テスト:試作品をユーザーに使ってみてもらってフィードバックを受け取ります。そして、2つ目の「定義」で設定したユーザーのニーズに沿ったもので、課題解決が図れているか検証を行います。

デザインシンキングは、必ずしも1~5までの順番通りに連続して進めていくものではありません。前のプロセスに戻ることや同じプロセスを繰り返して行うこともあります。

デザインシンキングの欠点

デザインシンキングは万能なものではなく、開発する商品やサービスによっては合わないといった欠点もあります。

  • 向き不向きがある
  • 顧客ニーズを見落としがち
  • よくあるアイデアではNGだと考えてしまいやすい

デザインシンキングには向き不向きがあり、ゼロベースからの商品やサービスの開発には不向きです。既存の商品の場合は、ユーザーに共感して本質的なニーズや課題を探ることができますが、ゼロベースからユーザーの思考をもとに開発を行うのは難しいためです。

また、デザインシンキングでは顧客の本質的なニーズを発見することが重要ですが、ユーザーの声をそのまま受け取ってしまうと、ニーズの深いところを見落としてしまうことが危惧されます。たとえば、「3色からしか選べないのが不満」というユーザーの声があった場合、単に「カラーバリエーションを増やして欲しい」というニーズだけではなく、「色やパーツを選んでアレンジを楽しみたい」というニーズが隠れている可能性があります。ユーザーの表面的なニーズにだけ目を向けるのではなく、深堀していくことも大切です。

このほかに、デザインシンキングの結果、斬新なアイデアを盛り込んだものにしなければならないと思い込んでしまいがちなことも欠点に挙げられます。ありきたりのアイデアを盛り込んだモノであっても、ユーザーのニーズに沿っていればそれは、良い製品、サービスなのです。

 

デザインシンキングの具体例

デザインシンキングの具体例

デザインシンキングに成功して商品の大ヒットにつながった事例として、「Wii」と「瞬足」のケースが挙げられます。

いずれもこれまでの常識を覆す商品という共通点があります。「Wii」は家族との仲を取り持つゲーム機であり、「瞬足」は左右非対称のソールという特徴をもっています。

Wii

「Wii」は任天堂株式会社による家庭用ゲーム機で、2006年12月に発売され、現在は販売を終了していますが、年間出荷数が2,500万台を超えた大ヒット商品です。

任天堂では社員の家庭を調査した結果、「子供がゲームに夢中になると親との関係が悪化する」、「ゲームに熱中している子供はリビングの滞在時間が短い」という課題を発見しました。一方で、「家族で鍋を囲んでいる家庭は親密」ということも判明したのです。

そこで、「Wii」の開発にあたっては「家族で楽しめて家族関係が良くなる」というコンセプトのもと、デザインシンキングの思考方法に則って開発は進められました。コントローラーに至っては、1,000回以上試作が繰り返されています。

 

瞬足

「瞬足」は運動会のトラック競技で走りやすい、小学生の通学用の靴として、2003年に株式会社アキレスが発売したシューズです。

開発担当者は長年にわたって小学校の運動会のシューズの写真を撮り続け、狭い運動場では動きにくく、コーナーを走るときにバランスを崩す子供や転倒する子供が多いことを課題ととらえました。また、調査の結果、ほとんどの小学校の校庭は左回りとなっていることがわかりました。

そして、見出したのが「左回りのコーナーでトラブルなく走れるシューズ」というニーズです。その結果、左回りのコーナーで走りやすい「左右非対称ソール」というこれまでにない商品を開発し、大ヒットに至ったのです。

 

ブランドカラーとイメージカラー

ブランドカラーとイメージカラー

ブランドカラーはブランドを識別するためのカラーです。人間は目から入る情報のうち、8割を色彩から得ているといわれるように、カラーによる情報は重要な位置付けとなります。そのため、ブランドカラーはブランドを識別する重要な要素であり、ブランドのイメージを大きく左右します。一方、イメージカラーはモノや人のイメージをカラーで表したものです。

デザインシンキングの思考方法に沿って考えていくと、ユーザーが商品やサービスに対して考えているイメージカラーとブランドカラーが一致していれば、ブランディングが成功しているといえます。ブランドカラーとイメージカラーが一致しない場合は、ブランディング戦略を再検討する必要があり、ユーザーのイメージカラーをブランドカラーにすることも選択肢となります。

まとめ

デザインシンキングという思考方法は、商品やサービスの改良を行うときなど、デザイン以外の領域でも活用することができます。ユーザーの本質的なニーズを発見して、これまでにないアイデアを盛り込んだ商品やサービス打ち出せることが期待できます。ビジネスにおける思考方法の一つとして、デザインシンキングという選択肢があることを覚えておきましょう。

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