共創マーケティングとは?共創マーケティングによる企業の成功事例も紹介

戦略・フレームワーク

共創マーケティングとはなにか?なぜそれを行うのか?本記事では、共創マーケティングの内容と必要性、また、共創による製品開発の実態について解説します。

共創マーケティングとは

共創マーケティングとは

共創マーケティングとは、「社外」のパートナーと一緒になって製品開発を行うことです。主なパートナーは「消費者」と「外部企業」であり、どちらも開発初期の段階からかかわり、最終的な製品化まで一緒に行います。

共創のよいところは、売り手(企業)と買い手(消費者)が対立的な立場ではなく、協力的な立場で開発を進めるため、最初から消費者ニーズを取り込むことが容易なことです。また、求められるものを製品スペックやユーザビリティに取り込むこともできます。さらに、開発後も同様に消費者の声を反映させながら製品の改良を試みることも可能です。

外部企業との共創であれば、複眼的な視点や自社内にない知見を活かすことができることでしょう。技術的なことに限らず、たとえば市場を見る目や開発スタイルなどの気づきも得られます。またすべてを自社で内製化することに比べ、低コストで開発のための経営資源を手に入れられることも魅力です。

●関連記事:ブランディング戦略とは~成功事例と主な方法、おすすめの本を紹介

共創マーケティングの目的

共創マーケティングの目的には、以下の2つがあります。

  • 消費者や顧客が本当に欲しいものを作る、または製品の使用価値を消費者視点で高めること
  • 自前主義の限界を超え、製品開発の可能性を拡げること

1つ目は、これまでの製品開発でも大事なこととされていたので、当たり前に感じるかもしれません。しかし企業の現場で意外とできていなかったのが、これなのです。経営資源の限界や情報の限界、時に開発担当者の限界や過去の成功体験が生み出す「負の遺産」によって、「きれいごとではないマーケット・イン」を開発に活かすのは容易ではなかったと、私は考えています。

2つ目は、消費者や競争の変化が速いことと関係しています。GAFAがさまざまな業界地図を塗り替えていることを持ち出すまでもなく、多くの企業にとってはいかにして時代にキャッチアップしていくかが重要です。しかし実態は、従来の製品開発を続けているところも、まだまだ多いといえるでしょう。その根本には自前主義があるように思います。もちろん自前主義でも競争力のある製品を生み出せるならば問題はありません。しかし「それでは限界がある」と認めた企業から他社との共創、外部の知見を効率的に取りこむことを試みています。

共創マーケティングの重要性

共創マーケティングの重要性

共創とは、突き詰めるとイノベーションを生み出すことであり、これが共創を重視する理由です。これまでと同じことをしていては、消費者が本当に求める製品を作ることは難しい。これまでの経営資源では、変化の激しい競争環境で脱落してしまう。そのような危機感と必要性から共創が有効なアプローチとして注目されています。

イノベーション、つまり、ありきたりの製品ではなく、これまでとは違う、新しい価値を生み出すことが狙いです。自前主義や社内だけの凝り固まった考え方からイノベーションは生まれません。仮に生まれたとしても、往々にして古い考え方の人たちによって否定されてしまう。なぜなら理解されないのがイノベーションだからです。こうして古い考えの企業を、新しい考えの企業が易々と抜き去っていくのです。

イノベーションを生むには、まず社外の視点や新しいアイデアを発見する「仕組み」が必要ですそして新しいアイデアを謙虚に受け入れるのだという「自覚」が大事なのです。共創とはこの2つを前提にしています。

企業のコラボレーションが生み出す効果

企業同士のコラボレーションが生み出す効果とは何でしょうか。コラボレーション型の共創でよく知られているのは、セブンイレブン・ジャパンの「チームMD」です。

たとえば、セブンカフェを例に見てみましょう。2013年の最優秀日経新聞社賞にも選ばれました。セブンカフェ開発の裏には、味の素AGF(コーヒー開発)、三井物産(豆の輸入調達)、富士電機(コーヒーマシンの開発)など複数の外部企業が「チームの一員」として共創した経緯がありました。

セブンカフェの成功はまさにイノベーションでした。2013年の最優秀日経新聞賞に選ばれたとき、このようなコメントがありました。「価格はシンプルに100円。それなのにスターバックスなど有名ブランドに負けない美味しさが楽しめるとあって、1年間での売上杯数は4億6,000万杯に達した」。ここには、消費者が本当に飲みたかったコーヒーが手頃な価格で実現できた(イノベーション)ことが伺えます。

結果、セブンイレブンはもちろん、これらの協力会社も業績を大きく伸ばすことに成功しました。つまり、共創によってコラボレーションした企業すべてが、実質的な成果を手にすることができたのです。

消費者との共創の具体例①

無印良品の共創による製品開発はよく知られています。無印良品の「くらしの良品研究所」はMuji.netという共創のプラットフォームをもっています。

消費者はまず、Muji.netの会員になります。そして、ウェブサイト上で発表される「製品開発プロジェクト」を一緒になって考えます。企業側からのプロジェクト立ち上げもあれば、消費者側から「あったらいいな」のプロジェクト立ち上げもあります。アイデアや要望を出し、最終的には製品化していきます。さらに発売後もその使用実感や改善点などをフィードバックし、さらによい製品に仕上げ続けていくのです。

無印良品の製品は、何気なく使う生活雑貨や衣類、家庭用品や食品など日用品が多いですが、そのような何気ない製品のなかにも「かゆいところに手が届く工夫」「ちょっとしたイノベーション」が見られます。たとえば、「スリッパ」という見慣れた製品を「まっさらな視点」で見つめ直し作りなおすのが特徴です。

消費者との共創の具体例②

消費者との共創の具体例②

SNSを通じた消費者との共創もあります。特に新興企業に見られる、スモールマス戦略がそうです。たとえば、化粧品のボタニストなどが有名。実際のユーザーやファンとの交流、SNS上のデータ分析を開発に活かすことなどは、やはり大手の課題ですが、新興企業はむしろここが強みでもあります。

スモールマス戦略では、SNSでのフォロワーを「ファン」と定義づけその声を拾います。その嗜好性や選んだ理由をデータ分析して製品開発に活かすのです。これは現代的なAI時代のマーケット・インです。顧客体験を知り、製品改良を加えるわけです。ときには個々の消費者にあわせた製品のカスタマイズも行うので、消費者にしてみたら「私のことをよくわかってくれる」という感覚なのでしょう。

生産もスモールロット、または外注、コラボレーションが基本です。大手ではどうしても生産ロットが大きくなり、売れるかどうかわからないものを過剰に生産せざるを得ないこともあります。つまり、スモールマスの強みの一つは「持たない」ことといえます。そして、人気が出るようならそのまま生産量を増やす。ここでもSNS上の反応をみながら、可能性のある製品とそうでないものを見極め、後者は早々に撤退させます。

スモールマスは従来の共創とは若干違いますが、デジタル時代の先端的な開発スタイル、共創という概念をベースに発展したスタイルと捉えてもよいと思います。

共創のプラットフォーム

企業はそれぞれで外部とつながる努力をしていますが、世界的に見ると共創をアウトソーシングできる「共創プラットフォーム」も登場しています。

クラウド・ソーシングを使ったもので、数十万人の「消費者」と繋がって開発したい製品のアイデアをもらうことができます。そこに登録している「消費者」の多くは、クリエイターやアーティスト、デザイナー、または美術学校の学生などで構成されていることが多いです。彼らはいわゆる「デザイン思考」ができる人たちでり、「クリエイティブ・コンシュマー」と呼ばれます。つまり、「ちょっと先が見える消費者」「消費者ではあるけれど開発眼をもった消費者」の意見が聞けることが魅力です。

私がこれまで利用してきたのは「eYeka(アイカ)」というフランスのプラットフォームです。eYekaは世界中に38万人のクリエイティブ・コンシュマーを抱えています。そして企業は、「こんなことで困っている」「こんな課題を解決するアイデアはないだろうか」と、彼らに「お題」を投げます。コンテスト形式なのです。そこに世界中からアイデアが集まります。そのなかで「これは」と思えるもの上位1位から3位を決めて賞金を出します。そのアイデアの知財権を買い取るのです。

共創プラットフォームの事例

eYekaで成功した事例として、P&Gの電動歯ブラシ「ブラウンOral-B」を紹介します。まずクリエイティブ・コンシュマーに次のお題が出されました。

「電動歯ブラシでのオーラルケアに革命を起こしてください。インターネットにつながる歯ブラシとはどんなものか?それはあなたの生活をどのように便利にしてくれるか考えてください」

そして世界中から、わずか3週間のうちに100近くのアイデアが集まりました。最終的には「電動歯ブラシがBluetoothでスマホのアプリと連動し、どの程度、うまく磨けているかを診断してくれるインターネット電動歯ブラシ」というアイデアが出てきました。実施から18か月後、このアイデアは製品化され、日本でも発売されています。

まとめ

共創はイノベーションを生む戦略です。消費者との共創、他社との共創によって、企業は「きれいごとでないマーケット・イン」を実現すると同時に、自社の経営資源の限界を超えた製品開発を実現するのです。

●関連記事:コミュニティマーケティングとは~目的とメリット・デメリット、成功事例

 

記事執筆者

水野与志朗

PROFILE

味の素ゼネラルフーヅ(現:味の素AGF)、欧米の外資系数社にてブランド・マネージャー、マーケティング・マネージャー、マーケティング・ディレクターを歴任。書籍出版をきかっけにフリーのコンサルタントとして独立。2005年に水野与志朗事務所株式会社を設立。
「全力でクライアントに向き合う」をモットーに200社以上のマーケティング、ブランド戦略の業務支援・協力を行う。事業会社のブランド・マネージャー出身であることから「売上責任をもった事業経営者の視点」に立脚した支援を得意とする。