服が売れない時代といわれ、実店舗での販売がメインであった時代からネット通販の比重が高まっていくなど、アパレル業界は構造の改革を求められています。一方で、ブランディングに成功して収益を確保している企業も少なくありません。
そこで、本記事では、アパレル業界でのブランディングの成功事例やブランディングの必要性についてご紹介します。
アパレルのブランディング成功事例
アパレルのブランディング成功事例として、以下の3つのケースを取り上げ、説明します。
- ユニクロ
- NIKE
- ワコール
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ユニクロ
ユニクロはファーストリテイリングの傘下のカジュアルウェアブランド。1984年に第1号店を広島市に出店し、2019年8月には国内に817店舗、海外に1,379店舗を構えるまでに成長しています。
ユニクロは1998年に1,900円のフリースが話題を呼ぶなど、当初は低価格で品質のよい商品を提供するブランディング戦略をとっていました。しかし、大手スーパーなどが同等の質の商品を展開したことから、価格競争に巻き込まれたのです。そこで、2006年から超低価格路線をとる別ブランドとして「GU」を展開し、全国へ大量出店を行い、競合他社を食い止める戦略に出ました。
一方で、ユニクロは2007年のヒートテックキャンペーンが成功し、エアリズムやブラトップなどを含め、機能性を重視した商品を展開しています。そして現在では、高品質で着心地がよく手に入れやすい価格の日常着「LifeWear」としてのブランディングを確立しました。
また、ユニクロは、世界的な有名ブランドや有名デザイナーとのコラボ商品を打ち出しているのも特徴です。高級ブランドなどとのコラボによって、ユニクロは特別感・おしゃれ感といった要素も兼ね備えることに成功しています。
NIKE
NIKEは1972年に米国で設立されたスポーツウェアのブランドです。前身であるブルーリボンスポーツは、日本のオニヅカタイガー(現:アシックス)のアメリカ販売代理店に過ぎませんでした。それが、スポーツウェアブランドで売上世界1位となるまでに成長を遂げたのです。
NIKEは技術的に優れた商品を打ち出しているだけではなく、革新的なマーケティング手法をとったことが成長に大きく関連しています。NIKEの「スウィッシュ」と呼ばれるロゴは1971年に商標登録されましたが、50年近く経った今でもデザイン性が評価されている斬新なデザインです。ブランド名を隠した「デ・ブランディング」の先駆けといわれています。
また、NIKEは創業期からトップアスリートと契約を結んで自社商品を使用してもらい、宣伝につながるエンドースメント契約に力を入れてきました。1970年代には、シューズの売上を伸ばすために、ジョギングブームを巻き起こすという戦略PRを行っています。
1985年にはマイケル・ジョーダンと広告宣伝契約を結んで生まれた「エア・ジョーダン」が、NBAのシューズの規約に違反していることから罰金を支払う騒動に発展しましたが、それを逆手にとったCM展開によって大ヒットしました。
また、2007年にはアスリートではなく、ヒップホップ界のカリスマであるカニエ・ウエストとのパートナーシップにより、クールなイメージも獲得しました。
ワコール
ワコールは1946年に創業した、主に女性用下着を取り扱う衣料品メーカーです。ワコールは下着を通じて女性の美を追求してきた企業で、品質の高さが強みです。55年にわたって蓄積してきた体型データを活用し、着け心地を重視した独自の快適設計と、高い縫製技術や厳格な品質管理によって商品を生産しています。
ワコールでは、消費者のニーズの多様化に合わせてメインブランドの「ワコール」のほか、「ウイング」や「ワコールディア」「CW-X」といったブランドやサブブランドを展開する戦略をとっています。
ワコールは大手老舗メーカーとしての知名度はありますが、下着は購入頻度が少なく、メーカーと顧客との接点が少ないという業界に共通する課題を抱えていました。
そこで、2013年に下着への関心を高めることを目的に、オウンドメディア「WACOAL BODY BOOK」を開設しました。また、会員制WEBサービスの「MyWacoal」や直営店のポイント管理などができるアプリ「WACOAL CARNET」にもコンテンツを配信することで、顧客をロイヤル顧客に育てていく施策をとっています。さらに、リアルイベントを開催することで身近に感じてもらう取り組みも行っています。
アパレル業界とブランディング
ファストファッションの台頭とフリマアプリの浸透によって、ファッションにお金をかけない低コスト思考が広まっていることが、アパレル業界の課題となっています。また、ネット販売が増加傾向にあり、実店舗での売れ行きが落ち込んでいます。
一方で、高級品やセレクトショップの一点ものを好み、ファッションにお金をかける層もいるなど二極化しています。そのため、ブランディングによって市場での自社のポジションを明確にすることが大切です。また、実店舗での販売とネットショップでの販売の実態に合わせて、人材の配置やマーケティング戦略をとる必要があります。
アパレル業界におけるブランディングの目的
アパレル業界におけるブランディングには、主に以下の目的があります。
- 他社との差別化
- ロイヤル顧客の獲得
- プレミアム価格による利益アップ
ブランディングによって、「トレンドをおさえたおしゃれな服なら○○」といった意識が顧客に根づいて、他社との差別化を図ることができます。
また、自社のブランドに愛着をもち、繰り返し購入するロイヤル顧客を獲得できると、売上が安定します。さらに、ブランドへの愛着によって、他社の同等の商品よりも上乗せしたプレミアム価格での販売が可能になると、利益率のアップも期待できます。
リブランディングの必要性
リブランディングとは、既存のブランドのイメージを一新して、時代や顧客層の変化に合わせて再構築することをいいます。
リブランディングは、主に購入者や購入単価の減少、購入頻度の低下などによって売上が低迷しているときに行われます。アパレル業界の場合は、時間の経過とともに顧客層が高齢化してしまい、古臭いイメージから若い世代から敬遠されてしまった結果、売上が減少している場合に、リブランディングが行われることが多いです。
リブランディングにはさまざまな手法があり、ターゲット設定やブランドイメージ、市場でのポジション、価格帯、販売チャネルなどを売上が低迷する要因に合わせて変えていきます。
ブランド価値の低下はなぜ起こるか
アパレルブランドの価値の低下を招く要因として、まず、過剰な出店戦略があげられます。店舗数の増加とともに、既存の顧客層とミスマッチな場所へ出店すると、新たな顧客層を取り込まなければならなくなり、それにより、どこにでもあるような商品展開となってしまうと、顧客離れを起こす要因になります。
また、新ブランドを立ち上げたときに、既存ブランドと顧客層の棲み分けができないケースも、売上の低下につながってしまい、ブランド価値を棄損します。
このほかに、ファストファッションの台頭もブランド価値の低下を招く要因です。ファストファッションは販売期間が短く、大量の在庫を抱えると、値下げ販売をせざるを得ない状況となり、倉庫料も経営を圧迫します。また、フリマアプリなどによる二次流通が盛んになったことで、新品のブランド品離れが起こることもブランと価値を低下させます。
アパレルブランドに求められるマーケティング
アパレル業界は「メーカー」→「問屋」→「小売」という構造であり、メーカーと顧客との距離が遠いという課題がありました。そこで、自社でオウンドメディアを運営するなどコンテンツマーケティングを行うことで、顧客との距離を縮めるマーケティング戦略が求められています。
また、服が売れないといわれる時代の中、企画・製造から販売までを一環で行う業態は好調であり、また、実店舗よりもネット通販で売れる時代となってきています。メーカーも自社サイトでの販売を強化し、通販限定品をつくるといった工夫を行うことが必要です。
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まとめ
アパレル業界は二極化の様相を見せていることから、ブランディングによって市場での立ち位置を明確にすることが大切です。また、通販を強化するなど時代に合わせて販売チャネルを変えていくといった、マーケティング戦略が求められます。ブランディングの成功例を参考に自社のブランディングに取り組んでいきましょう。